【北陸3 エリアをめぐる農泊旅】
山も海も満喫の身も心もととのう旅
北陸地方の象徴でもある能登半島。海と山に囲まれた能登半島には、今でも日本の農山漁村の原風景が残り、2011年には「世界農業遺産」にも認定されました。まだ見ぬ里山の暮らしに出合える志賀町、自然と人々の営みを感じる輪島市、そして海の幸をはじめ“おいしいものの宝庫”といわれる氷見市。---女子旅にも最適な「志賀・輪島・氷見の農泊」をご紹介します。
サウナと発酵食で身体にいいこと体験
能登半島のほぼ中央に位置する石川県志賀町。人口2万人にも満たない小さな町ながらも、石川県を代表する景勝地「能登金剛」などの観光スポット、8つの漁港でとれる海の幸に、里山で育つ新鮮な野菜など、豊かな食材と自然にあふれる町です。
「古民家こずえ」はそんな志賀町の魅力を伝え、地域の人々とゲストをつなぐ農家民宿。築80年の実家を改築し、1日1組限定で農泊体験を行っています。稲刈りや芋掘り、沢あそびなど、都会では経験できない体験が叶い、思わず「ただいま」と帰りたくなる懐かしさと温もりに包まれた場所です。
- 自然と共存する農家民宿に泊まる
- 草木染めでSDGsに触れる
- 先人に学ぶ郷土料理作り
- 心身ととのうウエルネス体験
先人に学ぶサステナブル体験
丁寧で豊かな暮らし。昔からそこに住んでいる人にとっては当たり前の風景ですが、現代に求められている“豊かさ”が、実は里山にはたくさん残っていることに気づかされます。
「ここの暮らしそのものがとても価値のあるものなんです。この何物にも代えがたい里山の魅力をぜひ外の人にも知ってもらいたい、そしてずっと残し伝えていきたい」(農家民宿女将・梢さん)。
そんな地域の魅力や価値を感じてもらうため、「古民家こずえ」では、さまざまな体験を行っています。バーベキューや石窯ピザ作りなど、子どもと一緒に楽しめる体験も豊富ですが、大人の女性が楽しめる体験も充実。今回は「草木染め」「発酵食」「薬草茶」「サウナ」を体験させてもらいました。
「草木染め体験」は、タマネギの皮に能登の野山に自生するヒバを加えトートバッグを染めます。化学染料のようなはっきりした色ではなく、1つひとつ味わいある色味になるのが特徴。唯一無二のトートバッグができました。
野山に自生する薬草をブレンドしてお好みのお茶に仕上げる「薬草茶体験」は、薬草の効能を聞きながらお茶も楽しめるワークショップです。かつては薬草の一大産地だったという歴史がある志賀町熊野地区では、地域活性を目的とした「薬草とハーブ くまのプロジェクト」に取り組んでいます。里山をまるごとハーブガーデンにする構想や収穫したハーブを使ったオリジナル商品の開発。また、地域に暮らす人々の自宅の庭先、畑で育てているさまざまなハーブを見ることができます。
近所に住むおばあちゃんから「かぶら寿司」の作り方も教えてもらいました。
発酵食文化が根付く北陸エリアには、高温多湿な気候、良質な水など発酵食品に適した土壌があります。そして海と山、双方の味覚がふんだんにとれることから、保存・加工の技術が磨かれ、発酵食品産業が発達したといわれています。
石川県の郷土料理でもある「かぶら寿司」もその一つ。塩漬けしたカブに、塩漬けしたブリを挟み、糀で漬け込み醗酵させた石川県を代表する郷土食であり、お正月の定番料理です。
能登地方を代表する食材であるブリ。高級品で庶民が口にできる機会は滅多にない中、なんとか食べようと考え出されたのが「かぶら寿司」のはじまりともいわれています。
時代とともに薄れゆく発酵文化こそ、先人たちの知恵。そんなサステナブルな体験ができるのもこの宿の魅力です。
できあがった「かぶら寿司」と薬草茶を囲んで、おばあちゃんが里山での暮らし方を話してくれました。そんな地域の方々との触れ合いも「農泊」の楽しみの一つです。
古き良き文化だけでなく今時のサウナ体験も!併設のテントサウナでは、自然の中で“ととのう体験”が叶います。薪は間伐材を使用、ポンチョ、サウナハットの貸し出し付き。ハーブロウリュも楽しめます。
地域全体がホテルとなり、地域全体でゲストをもてなす
後世に残したい日本の原風景が残る場所として、もう1カ所訪れたい地域があります。
輪島塗で知られる石川県輪島市。「日本の棚田百選」に選ばれた景勝地「白米千枚田」や“日本三大朝市”に数えられる「輪島朝市」など、観光名所がたくさんあるエリアです。そんな輪島に魅了されこの地に移住、「里山まるごとホテル」をオープンさせたのがオーナーの山本亮さんです。
観光地に魅かれたというより「三井町の昔ながらの里山の風景、地域の人たちの温かさに魅かれました」(山本さん)。東京生まれ東京育ちの山本さん。地域に住んでいる人々が三井町の景色を守り、誇りを持って暮らしている姿に深い感銘を受け、地域おこし協力隊を経て、この地に移住。
「里山に暮らしているように過ごせる拠点にしたい」。そんな山本さんの想いが詰まった地域一体型のコミュニティです。
- 里山の暮らしをまるごと体験
- 里山で遊ぶ、自然の中のアクティビティ
- 滋味あふれる朝ごはんのおもてなし
- 郷土料理のフルコース、里山ディナー
- ボディトリートメントで一日の疲れをオフ
里山暮らしを満喫できるアクティビティ
地域全体がホテルとなる「里山まるごとホテル」。宿泊するのは、築150年ほどの古民家をリノベーションした「中右衛門」。フロント&レストラン「茅葺庵」から徒歩10分ほどの場所にある、1日1組限定で最大7名まで宿泊可能な一棟貸しの宿です。歴史を感じる建物をはじめ、古き良き趣は残し、過ごしやすいよう設備は最新のものを完備。実家のような安心感がありながらも、ホテルのような特別感ある寛ぎの空間で、思い思いにゆったり過ごすことができます。
何をするでもなく、自然の中で心を休めるのもおすすめですが、普段の里山の暮らしに触れられるアクティビティもぜひ体験してみてください。山本さんがガイドとなって周囲を案内してくれる「里山散歩ツアー」や、夕食後に満天の星空やホタルを鑑賞する「ナイトツアー」。野菜の収穫体験、和紙づくり、味噌づくりなど、地域に住む先人たちから暮らす知恵を学ぶ、ここならではアクティビティが楽しめます。
「中右衛門」には土間もあり、昔ながらの竈門でご飯を炊く「竈門炊き体験」も。薪をくべ、炊き上げたご飯のおいしさに感動。忘れられない思い出に。
「中右衛門」まで運んでくれる朝食。輪島でとれたサバの干物、平飼い卵、自家製味噌の岩海苔の味噌汁、ごはんは輪島産のコシヒカリ。素朴ながらも滋味深い朝ごはんです。
囲炉裏ディナーと心身ほぐれるトリートメント
本日の夕食は茅葺屋根が特徴の築150年の「茅葺庵」で、この地に生まれ育ち、能登の魅力を知り尽くした谷内さん(通称やちばぁ)がメニューを考案した宿泊者1組限定の「里山ディナー」をいただきます。
かぶら寿司や山菜の天ぷらをはじめ、鹿肉のローストといったジビエまで、地の食材をふんだんに使った郷土料理のコースを、春から秋にかけては里山の絶景を望める縁側で、秋から冬にかけては囲炉裏で炭火の炎に癒されながら堪能できます。
食事は料理上手なやちばぁが担当、収穫体験は普段から農作業を行っている地域のおじいさんやおばあさんと一緒に。
地域が一体となって里山の暮らしと風景を紡ぎ、持続可能な未来を創っている輪島市三井町で、地域全体で観光客をおもてなしする“サスティナブルツーリズム”を体感できます。
本日の「里山ディナー」、メインは「能登豚の木っ端焼き」。やちばぁが囲炉裏で焼いてくれる焼きおにぎりで締め。大満足の夕食です。「中右衛門」でゆっくり食べたい人は「サバのすきやき風」と3種の発酵ダレで食べる「いのしし鍋」のどちらかを選べる「特製鍋セット」のケータリングも選べます。
山本さんの奥様、晶子さんが「癒やし処」を担当。能登に自生するクロモジ、ヒバのアロマオイルを使ったオイルトリートメントを受けられます
氷見で旬の海の幸を堪能
里山の魅力を存分に堪能した後は、海の幸をいただきに、寒ブリ、氷見牛、氷見うどんなど、ご当地グルメの宝庫である氷見市に向かいます。魚や貝、カニ、ホタルイカなどの海産物が豊富にとれることから、 “天然のいけす”と称される富山湾。特殊な地形と立山連峰から流れ込む栄養分を含んだ海水を求めたくさんの魚介類が集まり、その数は500種近いといわれています。
そんな氷見の“おいしいもの”が一挙に集まるのが「ひみ番屋街」。お寿司や海鮮丼、氷見うどんなどのグルメをはじめ、鮮魚や加工品などのお土産、立山連峰を望める展望広場や足湯、日帰り温泉まで「食べる・買う・楽しむ」をすべて網羅できる道の駅です。
- 氷見に来たらマストで寄りたい「番屋街」
- 冬の味覚「ブリしゃぶ」を堪能
- 知る人ぞ知るブランド牛「氷見牛」を味わう
- 年代問わず楽しめる!かまぼこ絵付け体験
氷見の冬の風物詩“寒ブリ”
氷見に来たら絶対食べたい「寒ブリ」。氷見の特産物であり、冬の風物詩にもなっています。「ひみ寒ぶり」は普通のブリとは異なり、氷見魚ブランド対策協議会が判定した期間(例年11月末~2月頃)に、富山湾の定置網で捕獲され、氷見漁港で競られた6kg以上のブリのことをいいます。毎年ブリがとれはじめ、大きさや形などを見て、本格的なシーズンが訪れたことを把握すると「ひみ寒ぶり宣言」が出されます。
この時期でしか味わえない脂がのった寒ブリを、番屋街にある「魚のレストラン 番屋亭」にて、しゃぶしゃぶにしていただきます。寒ブリの提供期間は11月中旬~2月頃まで。毎年、楽しみに全国から多くの人が訪れる人気のメニューとなっています。
氷見漁港場外市場ひみ番屋街
(ひみぎょこうじょうがいしじょうひみばんやがい)
- 住所
- 富山県氷見市北大町25-5
- TEL
- 0766-72-3400
- 営業時間
- 鮮魚・物販施設:8:30~18:00、フードコート:8:30~18:00、飲食施設:11:00~18:00、回転寿司:10:00~20:00
※各店舗により異なる
- 関連サイト
- https://himi-banya.jp/
魚のレストラン 番屋亭
- 住所
- 富山県氷見市北大町25-5
- TEL
- 0766-72-3400(代表)
- 営業時間
- 8:00〜9:00(朝食のみ)、11:00〜17:00
氷見といえば海の幸が有名ですが、実は富山県最大の肉の産地でもあります。氷見牛は、自然豊かな環境で丁寧に育てられた希少なブランド牛。番屋街にある「極 Ban Gyu」では、「氷見牛ロース丼」などの丼ものをはじめ、「氷見牛握り」などのお寿司まで、幅広いメニューが楽しめます。フードコートなので、他店よりもお得に味わえるのもうれしいです。
極 Ban Gyu(きわみばんぎゅう)
- 住所
- 富山県氷見市北大町25-5
- TEL
- 0766-72-3400(代表)
- 営業時間
- 11:00~16:30
老舗かまぼこ店の絵付け体験
富山の食を語るうえで「かまぼこ」の存在も欠かせません。
富山湾で多種多様な魚がとれたことで、富山県のかまぼこ文化が育まれました。昆布などでうずまき状に撒かれた「色巻きかまぼこ」と、いろいろな形をした華やかな色彩の「細工かまぼこ」が有名です。「細工かまぼこ」は、結婚式などのお祝いごとに使われるのが一般的で、鯛や鶴など縁起の良いものがモチーフになっていることが多いのはそのためです。
氷見市では「細工かまぼこの絵付け体験」を行う場所もあり、今回は老舗の「與市郎かまぼこ店」にて体験させてもらいました。以前はたくさんあった手作りのかまぼこ店。氷見市で残っているのはこちらを含め3軒のみだそう。そんな手作りのかまぼこの土台をキャンパスに、思い思いの絵を描きます。一つひとつ丁寧に作り上げる細工かまぼこはお土産にもぴったりです。
絵心が試されますが、ご主人が丁寧に教えてくれるので安心。作ったかまぼこは蒸してから冷まし、真空パックしてくれるのでその場で持ち帰ることができます
山も海も満喫の身も心もととのう「志賀・輪島・氷見」の農泊旅。日本の原風景が残る里山で、丁寧に、そして豊かに暮らす術を学び、おいしいものにあふれた氷見を堪能。日常を忘れ、とことん楽しみ尽くしたい人におすすめです。