【北陸2エリアをめぐる農泊旅】
大地のパワーを感じる白山・上越ステイ
古来より山岳信仰が根付く日本には、“霊山”と呼ばれる山が数多く存在します。石川県にある白山、新潟県にある妙高山もその一つ。信仰が息づいた2つのエリアを巡り、自然のエネルギーをたくさん吸収。アクティビティや伝統食など、この土地ならではの文化や歴史に触れることができるのも魅力です。---そんな心身を浄化させる「白山・上越の農泊」をご紹介します。
白山信仰が根付く文化を感じる
富士山、立山と並ぶ日本三名山の一つに数えられる「霊峰 白山」。雪を頂き、光を浴びて輝く姿に、古くから「白き神々の座」と信じ崇められてきました。白山から湧く水は「手取川」をはじめ、「九頭竜川」「長良川」などを流れ、地域一帯の農耕に大きな恵みを与えました。
農耕に不可欠な水を供給する“山の神”としてだけではなく、日本海を航行する船の航海の指標となることから“海の神”ともいわれており、現代でも日本海に出る漁師たちからの信仰は厚く、白山比咩神社の名が大漁旗に記してある漁船も多いそうです。
縁結びのご利益で知られる歴史あるパワースポット
「白山信仰」が今でも根付いているのが、白山を神体山と祀る「白山比咩神社」。全国に三千社余りある「白山神社」の総本宮です。勧請は崇神天皇7年(紀元前91年)、崇神天皇が本宮の北にある舟岡山(白山市八幡町)を神地に定めたことと伝えられています。応神28年(297年)に手取川の右岸に位置する十八講河原に遷座されたものの洪水が多かったため、霊亀2年に安久濤の森に遷座。文明12年(1480年)の大火によって、40余りあった堂塔伽藍が焼失し、末社三宮が鎮座していた現在地へ遷りました。現在の社殿は、昭和63年(1988年)に建立されたものになります。
北陸随一のパワースポットとして知られ、縁結び、五穀豊穣、大漁満足、開運招福、生業繁栄など、多くのご利益があるといわれています。また、毎年春と秋には、五穀豊穣を祈る祭りを開催。白山の水の恵みに感謝する祭典で、今でも多くの人々の心に白山の水への信仰心が強く残っていることを物語っています。
境内には「白山霊水」と呼ばれる白山からの伏流水が湧出。“延命長寿の水”ともいわれ、多くの人が汲みに訪れます
約47,000m²もの広大な境内には、樹齢千年といわれる杉やアスナロが天に向かってそびえ、荘厳な雰囲気が漂います
白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ
- 住所
- 石川県白山市三宮町二105-1
- TEL
- 076-272-0680
- 参拝時間
- 常時(宝物館/9:00~16:00、11月 9:30~15:30)
手取川が作り上げた雄大な渓谷美
白山市の農地を潤す「霊峰 白山」の水源は、市内を通り日本海に流れ着く石川県最大の一級河川「手取川」へと注がれます。手取川の吉野谷州下吉野から白山下に渡る「手取峡谷」は、手取川の流れが作り上げた美しい峡谷です。中流域、釜清水町(黄門橋)から河原山町(対山橋)まで高さ20~30mの絶壁が約8kmに渡って続き、四季折々に彩られた渓谷美を楽しむことができます。落差32m、一直線に流れ落ちる「錦ケ滝」も見どころの一つ。
手取峡谷(てどりきょうこく)
- 住所
- 石川県白山市釜清水町~河原山町地内
- TEL
- 076-259-5893(一般社団法人 白山市観光連盟)
- 時間
- 常時
当時の情景を思い浮かべアクティビティを楽しむ
遠くから眺めるだけでも、神秘を感じられる「霊峰 白山」。奈良時代には全国から多くの修験者が集まり、山中で厳しい修行を積んでいたといわれています。「禅定道」は、そんな厚い信仰心を持って山頂を目指す者たちが歩き整えられできた道のことです。現在のように登山道や登山用具などがなかった時代。雪深く、険しい道をどのように登ったのか、想像するに余りある苦労があったことでしょう。
おそらく、当時の登山にも用いられていたであろう「かんじき」。深く積もった雪の上を歩くために考えられた先人たちの知恵が生きた民具です。
そんな当時の情景を思い浮かべながら、雪遊び体験ができるのが「一里野温泉スキー場」。
「スノーシュー体験」は、かんじきの進化版であるスノーシューをはいて、自然の中を歩く冬限定のアクティビティです。当時の人々が「かんじき」と一緒にまとっていたであろう「蓑」の貸し出しもあるので、当時の風景に思いを馳せながら、静寂に包まれた冬の絶景や動植物観察を楽しみましょう。
「スノーシュー体験」では歩き方から教えてくれるので初心者でも安心。周辺のガイド、コーヒーブレイク付き
山の恵み、水の恵みに感謝しいただく報恩講料理
「スノーシュー体験」で身体を動かした後は、スキー場目の前にある「岩間山荘」へ向かいます。ここで体験できるのは“自然の恵みをお腹いっぱいいただく”報恩講料理体験。
浄土真宗では、親鸞聖人の命日にその遺徳を偲んで営む仏事を「報恩講」といい、真宗王国といわれる北陸では、命日の前後には各地で報恩講のお勤めが行われます。その際にふるまわれる伝統料理が「報恩講料理」。白山麓では、山菜や野菜などをふんだんに使った精進料理を、輪島塗のお膳と大皿料理をみんなで回す「まわし鉢」でいただきます。
豆腐を固めた「堅豆腐」や、芋にクルミや栗を加えお饅頭にした「くずまわし」など、とにかく食べきれないほどの品数が並びます。
「白米が高価だった時代。報恩講は、お腹いっぱい食べることができる貴重な機会だったので、参加する人は料理を重箱に詰めて持って帰り、家族みんなで食べるのが楽しみだったんですよ」と女将さん。
食べることは生きること。山のめぐみ、水のめぐみに感謝しながら、白山麓の伝統料理をいただきます。
「岩間山荘の報恩講料理体験」は、春(3~5月)、秋(9~11月)の開催(2人前から要予約)
- 山岳信仰が息づく白山麓で大地のエネルギーをチャージ
- 北陸随一といわれるパワースポットを巡る
- 蓑をまとったスノーシュー体験で当時へタイムスリップ
- おもてなしの意が込められた「報恩講料理」を味わう
上越編~山とつながり文化を感じる
山が育む豊かな自然と清らかな水。そんな山への毘敬の念から生まれた山岳信仰。新潟県の上越地方でも白山と同様に古くから山岳信仰が盛んであり、多くの修験者や行者が活動していたといわれています。
上越地域にある妙高山もその一つ。別名「越後富士」と呼ばれ、善光寺平とも呼ばれる長野盆地の背後にそびえる信越五岳の一つに数えられています。かつて山頂には阿弥陀堂があったといわれ、阿弥陀如来の浄土として信仰されていました。善光寺の本尊と同じ姿をした阿弥陀三尊「妙高山如来」は、平安時代末期の武将、木曽義仲が山頂の阿弥陀堂に奉納したといわれており、現在は新潟県妙高市の「関山神社」の隣に建立された「妙高堂」に安置されています。
毎年5月中旬から6月上旬頃にかけ、妙高山の山頂に「妙高山如来」の象徴でもある「山」の字の雪形が出現。妙高高原側でしか見ることができない不思議な自然現象も、妙高山が霊山と崇められる理由の一つといわれています。
- 大地の力を強く感じるパワースポット・妙高山
- 大自然の絶景を間近で感じるスノーモービル体験
- 地域の魅力が詰まった遊びの拠点YUKISATO Lodge(雪郷ロッジ)
雪原を滑走する爽快アクティビティ
信仰が残る妙高山の麓では、温泉をはじめ、大自然を満喫するアクティビティが充実。豪雪地帯で知られる上越市中郷区岡沢では、国内最大級のスノーモービルツアーが楽しめます。北米で使用している大型のスノーモービルに乗って、一面銀世界に囲まれた雄大な自然を大滑走する爽快体験。運営するのはこの地域の雄大な自然に魅かれ移住した塚田卓弥さんです。
「海外や北海道まで行かなくても同じ体験ができる、この岡沢地区の素晴らしい観光資源をワールドスタンダードにしていきたい」という想いで塚田さんが立ち上げたのが「雪郷プロジェクト」。少子高齢化が進み、地域の財産である自然を守る担い手がいない現状に一石を投じるべく、地域と一体となって暮らしを守り発展させるため発足したプロジェクトです。
「雪郷プロジェクト」の一環「YUKISATO Base(雪郷ベース)」では、冬はスノーモービル、夏はE-バイクや星空観察など、大自然をフィールドにさまざまなアクティビティ体験を。そして学びやコミュニティの場である「YUKISATO Lab(雪郷ラボ)」では、林業が盛んなこの地域ならではの「チェーンソウの使い方体験」や、田植え、稲刈りなどの農業体験を行っています。
「ウェルダネスアドベンチャー」(約1時間30分)は初心者でも安心。日本最長コースの「雪郷エクスペリエンス」(2時間30分)は、スノーシューまたは雪板体験付き
森をよく知る公認インストラクターが運転をレクチャーしてくれ、ツアーも同行するので初めてでも安心です
YUKISATO Base(雪郷ベース)
- 住所
- 新潟県上越市中郷区岡沢1441-2
- TEL
- 070-3236-6256
- 営業期間
- 2024年1月5日~3月中旬予定(雪のコンディションによる)
- 関連サイト
- 体験料はこちらから
地域の魅力を伝えるコミュニティのベース
スノーモービルで自然の神秘や大地のパワーを感じた後は、塚田さんが営む、もうひとつの拠点「YUKISATO Lodge(雪郷ロッジ)」へ。
「この地に訪れてくれた人が、雪の恵みによって得られたものを、食べて、飲んで、語らい、日の移ろいや季節の移ろいを五感で感じてもらいたい。そして少しでも長く過ごし、何度でも訪れてもらいたい」。そんな塚田さんの想いが込められたゲストハウスです。
地域の人にとってはネガティブ要素でしかなかった“豪雪地帯”というマイナス面を“たくさん雪が降るから、たくさん雪で遊べる”“たくさん積もった雪が、雪解け水となり棚田に流れおいしいお米ができる”など、逆転の発想で魅力に変える。「外から来たからこそ気づくことができる。まだまだたくさん魅力があるのが、この岡沢地区です」。地域のコミュニティと一体となって資源を継承していく。塚田さんが考える“農泊”がこの場所には脈々と根付いています。
元々あった古民家をリノベーションし木の温もりあふれるすてきな空間に。土間のある交流スペースのテーブルは地元岡沢地域の間伐材を活用。山も海も近く、体験や学びも充実しているので、宿泊するだけでなく、さまざまな過ごし方ができるのも魅力です。
寝室は全4タイプで最大10名まで宿泊可能。窓から妙高山や大毛無山、火打山を臨める部屋も。
薪で沸かす「五右衛門露天風呂」。田園風景と妙高山を望みながら心身を癒やす、唯一無二の体験を(4月~11月)
山岳信仰が残る2つのエリアで歴史や文化をたどる「白山・上越」の農泊旅。アクティビティや報恩講料理など、さまざまな体験も叶います。日常に疲れを感じたら、心をリセットする北陸の農泊へ出かけてみてはいかがでしょうか。